銀河天文学(4/7)の質問と回答

今学期は岡村さんの学部・大学院共通講義にてTAをやることになりました。
お仕事のひとつは、講義後に回収する質問票に対する回答を考えること。


そんなわけで、第一回目の僕の仕事ぶりをどぞ。

● 質問


ハーシェルの宇宙モデルについて)
ある立体角を見込んだときに、2つ以上の星が重なってみえていたら、
それを判別する方法はあるのでしょうか?スペクトル法?


これに対する僕の回答(岡村さんにメールしたままの形)。

● 回答


2つの星がまったく重なってしまった場合、判別することは困難です。
そもそも、より遠方にある天体からの電磁波が観測者に届かないからです。


この問題は、ハーシェルの宇宙においては考慮されていないと推測されます。
そのため、星々が重なり合う確率の高い方向(星の密度が高い方向)については
特に、"宇宙の端"までの距離を過小評価していると考えられます。
ただ、星々が完全に重なり合う確率は極めて小さいですから、
その効果はそれほど重要ではないと考えられます。


そしてその3時間後、岡村さんの手が加わり受講者全員に流れた回答。

● 回答


2つの星がまったく重なってしまった場合、判別することは困難です。
その場合は、そもそも、より遠方にある天体からの電磁波が観測者に
届かないからです。


しかし、星の見かけの大きさは、通常の望遠鏡では分解できないくらい
小さい(近似的に星は点光源)ので、視線方向に完全に重なってしまう
確率はほとんどゼロに近いと考えて良いです。しかし、実際には、
(望遠鏡の分解能というよりも)主に地球大気の影響で、星はある
大きさを持って観測されます。この大きさをシーイングといいます。
シーイングは、観測場所や時刻、また観測波長によって変わります。
可視光での値は以下のようなものです。ハワイにあるすばる望遠鏡での
ベストシーイング約0.4秒、日本国内の天文台ではベストで約1秒、通常
は3秒程度、冬の関東では10秒を越すこともあります。このシーイング
サイズの中で星が重なっても見分けることが難しくなります。ハーシェル
の望遠鏡では、天の川付近では、この意味で星が重なって観測されるこ
とはあったかもしれません。


この問題は、ハーシェルの宇宙モデルの導出では考慮されていないと
推測されます。そのため、星々が重なり合う確率の高い方向(星の密度
が高い方向)については特に、"宇宙の端"までの距離を幾分過小評価し
ている可能性はあります。ただ、シーイングサイズ内で星々が重なり合
う確率も極めて小さいですから、その効果は無視できる程度でしょう。
そもそも、眼視観測ですから、現代の天の川の写真を見て、重なり合う
ように密集している微光星はそもそも見えていなかったので、実際上は
何の影響もなかった可能性のほうが高いと思います。


PS:
ちなみに、大気圏外で撮影すれば、星が密集しているように見える
楕円銀河球状星団でも、その後方に天体があれば透けて見える
はずです。


貫禄が違いますね(笑)


この水準が求められてるわけですか、、、僕の回答の貧相なこと。。。

わー、ごめんなさい、ごめんなさい。。。