銀河天文学(4/14)の質問と回答
第二回目の仕事ぶり.
先週は,岡村さんにメールした僕の回答案が,5倍くらいに増幅されて
メーリスに流れたので驚きだったのですが,今週はマイナーチェンジのみで
メーリスに流れました.今週の岡村さんは,お忙しかったのかも.
なので,日本語がぎこちないとこや説明がわかりにくいとこがあったら,
そこはきっと僕の責任です(笑)
●質問1
北の銀極、南の銀極は何から決まるのでしょう。
銀河の回転方向からでしょうか。
●回答
銀河座標における銀緯90度の銀極の南北は、それぞれの銀極が
地球から見て南北のいずれにあるかで決められています。
黄道面と銀河面の相互関係は天文学者でも知らない人が結構
いるので、次回の講義で示します(小野君、私が忘れていたら
言って下さい)
●演習
B型主系列星、G型主系列星(太陽と同じ)、M型主系列星が
個数にして1:9:30の割合で存在する銀河の質量-光度比を計算せよ。
さらに、これにK型赤色巨星(10)が加わった1:9:30:10の銀河の
質量-光度比を計算せよ。(ここではとりあえず星間物質は無視する)
●2.1節末にある演習の解答
各スペクトル型の個数比が与えられていますから、ひとつ前の
スライドに載っている各スペクトル型の典型的な質量と光度を
用いれば計算できます。
以下、Moは太陽質量、Loは太陽光度を表すとします。
*前半(K型なし):
M/Mo = 6*1/40 + 1*9/40 + 0.5*30/40
L/Lo = 210*1/40 + 1*9/40 + 0.03*30/40
- > M/L 〜 0.14 [Mo/Lo]
*後半(K型あり):
M/Mo = 6*1/50 + 1*9/50 + 0.5*30/50 + 1*10/50
L/Lo = 210*1/50 + 1*9/50 + 0.03*30/50 + 250*10/50
- > M/L 〜 0.015 [Mo/Lo]
なお、今回の計算結果は、ひとつ前のスライドにある「銀河のM/L」に
比べて桁で小さい値になっています。その理由は、実際の銀河では
B型主系列星のようなM/Lの小さい星の割合はこの例よりずっと小さい
ためです(2.4で出てきます)。また、質量として星間物質やダーク
マターを考慮していないことも影響します。
●質問2
質量光度比は楕円銀河や渦巻銀河で変わりますか?
楕円銀河はダークマターが多いと聞いたことがあるので。
また、銀河団や銀河群ではどれくらいになりますか。
●回答
まず前半についてです。
楕円銀河と渦巻銀河とで質量光度比は変わります。
「銀河系と銀河宇宙」p.151の表5-3を参照すると、
楕円銀河ではM/L_B〜9、渦巻銀河ではM/L_B〜5程度です。
(銀河の質量光度比は、どの半径までに含まれる質量と光度を用いて
計算するかで値が変わりますが、この値は、可視光で見える限界くらいの
所までの半径を用いた時の値です。この程度の半径内ではダークマターの
寄与はそれほど大きくはありません。)
この違いは、定性的には、それぞれの銀河を構成する星の
種類の違いによって理解することができます。
渦巻銀河は楕円銀河に比べ、色が青いという特徴があります。
これは、渦巻銀河の方が、O型やB型といった有効温度の高い
主系列星の割合が大きいためです。O、B型星は質量光度比の
小さい星ですから、これらの寄与が大きい渦巻銀河の方が
楕円銀河に比べて、質量光度比が小さくなるというわけです。
なお、典型的な明るさの銀河について、分光観測から星質量を、
重力レンズ効果を利用してダークハロー質量を見積もった文献が
あります。Mandelbaum et al. 2006, MNRAS, 368, 715 (http://ads.nao.ac.jp/abs/2006MNRAS.368..715M)これによると、典型的な明るさの銀河については、ダークマターと
星の質量比は楕円や渦巻といった形態によらないようです。
続いて、後半についてです。
銀河群の一例として、局所銀河群の質量光度比を紹介します。
局所銀河群の質量の大部分を担っているのは、銀河系とM31
(アンドロメダ銀河)です。局所銀河群の力学質量は、矮小銀河の
運動を使って求めたこれらの力学質量の和から、〜1.6e+12Mo
と見積もられます。一方、局所銀河群の総光度はL_B〜1e+11Lo
ですから、質量光度比はM/L_B〜12.8となります。
(「銀河II - 銀河系」p.186より)
局所銀河群以外のグループを多数調べた統計によると、銀河群の
平均的な質量光度比は100程度の値になります。http://ads.nao.ac.jp/abs/1989ApJ...344...57R
銀河団については、観測したバンドは異なりますが、だいたい
a few*10^2程度と見積もられています。
興味があったら、以下の文献を参照してみたり、以下を引用している
文献をあたってみるとよいと思います。Girardi et al. 2000, ApJ, 530, 62 (http://ads.nao.ac.jp/abs/2000ApJ...530...62G) Carlberg et al. 1996, ApJ, 462, 32 (http://ads.nao.ac.jp/abs/1996ApJ...462...32C) Kochanek et al. 2003, ApJ, 585, 161 (http://ads.nao.ac.jp/abs/2003ApJ...585..161K) Hradecky et al. 2000, ApJ, 543, 521 (http://ads.nao.ac.jp/abs/2000ApJ...543..521H)
さりげなく,本にも触れてみたり(笑)
●質問3
演習2問目におけるヒント(?)がよく聞き取れなかったので
もう一度教えてください。
●回答
私も何を言ったかよく覚えていませんが、いま改めて問題を
見ると、m-M=10.2 とあるのは (m-M)_V=10.2 と書くべきでした。
E(B-V)からR_Vを介してA_Vが求まるので、9枚目のスライドの
式を使えば簡単にできますね。