銀河天文学(6/16)の質問と回答

久々に質問が出ました,4月以来!

質問票回収箱から取りだして,うれしそうに僕の所に持ってくる
岡村さんを見て,こちらまでうれしい気持ちになりました.

●質問


銀河の分類は様々なものがあることは分かりましたが,
それらの銀河の形は形成過程で何がクリティカルに関与
しているのでしょうか?

●回答


銀河の形態を決める物理的要因は何か,という質問ですが,
実はまだよくわかっていないというのが現状です.というか、
これは銀河形成論の未解決の重要課題です。


講義で紹介したように,観測的にはこれまで,現在の宇宙に
おける銀河の形態とさまざまな物理量との間の相関が,詳しく
調べられてきました.
おおざっぱにまとめると,楕円銀河やS0銀河から晩期型に
なるにつれて,暗く(質量が小さく),青く(新しい星の
割合が高く),中性水素ガスが多く(星形成の材料が多く),
重元素量が少ない(星形成が十分に進んでいない),などと
いった傾向があることがわかっています.
さらに,理論の予測との比較が容易になるよう,形態分類
ではなくプロファイル分類などの定量分類を用いて,それと
各物理量との相関を調べた研究も数多く行なわれてきました.


一方で,銀河形成の理論はとても難しい研究テーマです.
銀河をつくるためには,大量のガスを星にする必要があります.
そこで重要になる過程は,ガスの冷却や星の形成ですが,
それらはたいへん複雑なため,まだ完全には理解されていません.
銀河の形態と星形成の問題を考えるには、単に静かな状態に置
かれたガス塊が自己重力で崩壊して星を形成するという設定で
は十分でなく、超新星による効果(超新星爆発が星形成を抑制
したり,それによってばらまかれた重元素がガスの冷却効率を
上げたり,といったもの)や,銀河中心にあるブラックホール
効果(星形成を抑制する可能性がある),銀河同士の合体の効果
(爆発的な星形成を促す)なども考える必要があります.


銀河形成論において,星形成という素過程は物理的にまだ明らか
になっていないので, 現象論的にパラメータを導入することで
ブラックボックスのように扱われています.誇張して言えば,
パラメータの調整しだいで,どのような銀河も作り出せてしまう
のです.最近ではすばる望遠鏡などの活躍もあり,遠方銀河の
観測的研究がさかんになっています.現在だけでなく進化途中に
ある銀河も観測することで,銀河形成の理論を検証する道が開けて
きました。


銀河の形態と物理量との間の相関を,素過程から定量的に再現する
ことは,銀河形成論の大目標といえるでしょう.

途中から句読点を僕の下書きと同じものにそろえてくれたようなので,
「,.」を使っている箇所でも,岡村さんが加筆修正してくださって
いる箇所があります.