2001, AJ, 122, 2850-2857

Evidence for Reionization at z \sim 6: Detection of a Gunn-Peterson Trough in a z=6.28 Quasar
R. H. Becker et al.


この論文では、SDSSで見つかったz=5.82, \, 5.99, \, 6.28クエーサーを、適切な分解能のKeckで分光観測した結果について報告する。これらのクエーサーのスペクトルにおいて、ライマン・アルファ吸収が赤方偏移とともに強く進化することを発見した。z \sim 5.7までは、ライマン・アルファ吸収は、より赤方偏移の小さいところから外挿して予想したものと同じように進化する。しかしながら、それより赤方偏移の大きい天体SDSSp J103027.10+052455.0(z=6.28)では、平均透過フラックスは 8450 \text{\AA} < \lambda <  8710 \text{\AA}の範囲の連続光成分の0.0038 \pm 0.0026倍(ゼロ・フラックスに等しい)であった。つまり、フラックス・レベルは1/150以下になったということであり、z_{\text{abs}} \sim 5.3においてファクター10程度で小さくなったのと比較すると、ライマン・アルファ輝線の青い側はライマン・アルファの森におけるゼロ・フラックスであるということである。同様のbreakはライマン・ベータでも見える;この遷移のdecreased oscillator strengthのため、z=6におけるライマン・アルファ吸収に対する光学的深さに\tau_{\text{eff}} > 20という強い制限を付けることができた。これは明らかに、IGMにある中性水素によって引き起こされたGunn-Peterson troughを観測したものである。IGMのおける中性水素の割合がさらに小さくても、ライマン・アルファの森でフラックスは検出されないだろう。したがって、Gunn-Peterson troughの存在自体は、そのクエーサーが再電離の時期より過去にあるということを示しているわけではない。しかしながら、高赤方偏移クエーサーにおいて平均的な吸収がこれだけ早く進化しているということは、このクエーサーの視線上での平均的なionizing backgroundがz \sim 5から6にかけて著しく減少しているということ、そしてz \sim 6では宇宙は再電離の時期に近付いているということを示唆している。